水もしたたる1
床のシミに気がついたのは、いつだったろうか。一月前? いや、もっと前か?
台所の流しの床に敷いているマットにシミができていたのだ。誰かがしょうゆでもこぼしたのかと思っていた。
掃除のため、マットをめくって、驚いた。そのシミは、上からではなく、下から、つまり床から何かがにじみ出していたのだ。
配管がゆるんでいるのかと、流しの下をあけてみるが、ぬれている気配がない。
「そういえば、配管室の床に水が出ていたよ」。かみさんは、のんきにそんなことをつぶやいた。
ユニットバスとトイレと台所が背中あわせになっている壁面に、上下水の配管が集まっていて、そこに半畳ほどの、普段は忘れられている空間がある。
そこをのぞくには、トイレの戸棚から首を差し入れるか、台所のステンレスの壁面の1メートル四方を外さないといけない。
まず、トイレの小窓からのぞくと、確かにその空間の床が水でテラテラしている。
さっそく、台所へ回り、ビス止めしてある壁面を外し、ガス台によじ登って、中に入ってみる。
温水器から台所に引っ張ってきている配管から水が漏れていた。ポタポタ程度だが、さびの具合から、ずいぶん前から漏れていたようだ。
長時間かけて床面に溜まった水が、行き場がなく、台所の床下に回り込んでにじみ出ていたようだ。
しかも、ビニールテープが巻いてあるよ、これ。8年前、入居するときの内装工事の時点で漏れる予想があったのか。
とりあえず、床面の水をふき取り、バケツを置いて、漏水をためておく。