第七病棟のアトリエ

店主も町屋に住んで7年半、町屋堂を名乗り、ふだんから自転車を愛用し、あらゆる路地を走っているはず。もう町屋のまちを知り尽くしたと言ってもいいだろうと思っていた。


しかし。考え直してみると、そんなことはなかった。そもそも店主が町屋という地を最初に訪れたのは、84年(ちょっと怪しいが)。石橋蓮司緑魔子の主催する劇団「第七病棟」のアトリエ(柿落とし?)公演『ふたりの女』を観にきたときだ。あの頃は中央線沿線に住み、「町屋って、都内?」ってな認識。あれから20年後、まさかその地に住むことになるとは。


住んでいるのはいいが、そのアトリエを、公演を観て以来、いまだ見つけられないでいるのだ。だいたい、まだあるのかどうか。ただでさえ公演回数の少ない劇団である。ここ何回かは、もうアトリエでは公演していないようだし。


某喫茶店でよくお見かけする俳優・藤井敏さん(町屋在住らしい)に聞けばいいのだろうが、恐れ多い。そのうちに見つかるさと思っているうちに7年が経っている。不覚である。


しかし。先日、かみさんが偶然にも発見したのだ、アトリエを。まだあったのだった。かみさんも、あのころ何度か「第七病棟」にきていたのだが、やはり所在を思い出せないでいたのだった。


かみさんの職場から数分。住所では荒川6丁目になる。商店街からはずれ、ひと一人通るのがやっとの路地の奥に「第七病棟」の文字が。ああ、ここだ! 隣の児童公園で入場の順番待ちをしたのも思い出した。


しかし、今は入り口は固く閉ざされ、人の出入りしている感じはない。いつか、この入り口が開くときがくるのだろうか。