ラジオを聴いていたら、「野口五郎そっくりだなあ」と思わせる人が歌っていた。その時間は、『ふるさと自慢・歌自慢』といって、地方の町で出演者を募り、2チームで素人の歌を競わせ、ついでにその町についての紹介を兼ねるという、「夜ののど自慢」といった趣の騒々しい番組のはずだった。だから、この歌っている人はずいぶん、野口五郎になりきっているな、と思っていた。
しばらく聴いていると、それは自分の勘違いで、ゲストの野口五郎本人であることがわかるのだけれども。どうも番組の主旨が変わったらしい。いやそれとも番組自体が、春の再編で変わってしまったのか。いま、NHKのサイトで調べたら、やはり変わったようだ。ただの歌謡コンサートになっている。そういえば、その前にやっていた、『みんな大好き』という、中村メイ子が幼稚園児とその祖母を同時に演じるのが聴きものの家族礼賛ドラマが、こつ然と消えていたっけ。
そのうちに、なぜ野口五郎野口五郎の「まね」のように聞こえたのか、わかってきた。まあ、久しぶりに聴いたせいもあるんだろうが。
彼の歌のバックの演奏は、昔のヒット曲から新曲に至まで、全部自分で演奏し直して録音したものだという。「深夜に家族が寝静まった後に録音するんです」。その説明の後によく聴いてみると、ドラムも自分でやっているんだろう、演奏がモッタリしている。「グルーヴ」がないというのか。一本調子。昔、坂本龍一がドラムに凝って、自分の曲だけでなく、人に提供している曲でも演奏していたことを思い出した。スローな曲では、テンポがゆっくり過ぎて、野口五郎らしさが誇張されている。これは歌いにくいんではないか?と思うぐらい。自分で自分らしく歌おうとしているように聴こえる。
……なぜ? バックがいない分、安上がりなのかなあ。
野口五郎、わが道を行く。